スタッフへの注意の仕方と褒め方

日々の診療の中でスタッフの間違った行為に注意や指導を行う場面があるかと思います。そんな時、先生はどんなふうにスタッフに指導や注意をしていますか?例えば、スタッフが出勤時間に1分ほど遅刻してきたとします。たった1日、1回きりだけであればたまたまの遅刻だったのだろうと、何も言わないかもしれません。ですが、この1分ほどの遅刻を週に1度、月に数回あるといかがでしょうか?1回きりであればさほど気にならないことでも、何度も繰り返されると流石に注意や指導が必要になると思います。

注意や指摘の仕方

微々たる遅刻を度重ねてしまうと他のスタッフにも悪影響です。風紀が乱れる場合もあるでしょう。だからこそ、このようなスタッフには注意が必要です。そんな時、どのような注意の仕方をすると良いでしょうか?

A

時間を守れないなんてダメ人間だ!
遅刻するなんて人間として失格だ!

B

どうしてそんな無責任なことをするんだ!
時間にルーズだ!

C

なぜルールを破る?
ちゃんと時計を見ているのか?

D

後5分早く出勤するように!
5分前行動を意識するように!

E

何が原因でいつも遅刻しているの?
毎回遅刻する理由を教えてくれる?

A〜E、どのような叱り方をしますか?

人間の行動の変化には法則がある?!

心理学で人間の学習や変化には階層があるという考え方があります。人間の意識レベルを5段階に分けて分析しその段階へのアプローチを行うことで注意の仕方、褒め方も効果的に行えます。先ほどのA〜Eそれぞれ、その段階別の言葉かけでした。

Aは自己認識(セルフイメージ):自分の役割、ミッションなどを指します。

Bは価値観・信念:信じていること、思い込みを指します。

Cは能力:才能やリソースなどを指します。

Dは行動:振る舞いや体験などを指します。

Eは環境:身の回りを構成するものを指します。

なので、AやBの
時間を守れないなんてダメ人間だ!
遅刻するなんて人間として失格だ!
どうしてそんな無責任なことをするんだ!
時間にルーズだ!
と自己認識や価値観・信念を指摘してしまうと言われた側は落ち込んでしまうばかりか、仕事の対する意欲さえも失われてしまうのです。なので、効果的に注意をするとき、叱るときは、環境や行動に対して行います。

D

後5分早く出勤するように!
5分前行動を意識するように!

E

何が原因でいつも遅刻しているの?
毎回遅刻する理由を教えてくれる?
このように効果的に注意や指導を行う場合には相手の環境や行動にフォーカスした言葉かけを使いましょう。相手にダメージは残りにくく改善しやすくなります。

褒め方

褒める時はその逆で、Aの自己認識やBの信念・価値観を使った言葉かけを意識します。無遅刻無欠勤で働き続けているスタッフに対して

E「無遅刻無欠勤だね!」

D「毎日5分前行動は偉いね!」

C「皆勤賞はすごいね!」

B「うちの医院のため、患者さんのために努力しているね」

A「責任感があって素晴らしいです!」

EよりもAに行くほど褒められる気持ちが大きくなります。もしかすると、人によっては言葉の捉え方には違いがあるかもしれません。ですが、5つのレベルを意識して相手に伝えるだっけでも自分の存在が認められていてやる気も出るし前向きに頑張っている姿勢を見て成果を出したいとも思います。

褒めるも叱るも難しい!

スタッフを褒めたり、注意や指導が必要な場合、思っている以上に相手にどう言えば良いかとても難しいのです。間違った方法で褒めたり、注意や指導をした場合、相手のやる気を下げてしまうばかりではなく離職率にも影響してくるのではないでしょうか?

褒めるのも、一歩間違えば
「すごいね〜」
「さすがだね!」
スタッフの機嫌を取るような言葉かけに聞こえます。

一番やっちゃいけないのは感情的になったり、その時の感情で怒鳴り散らすような怒り方。パワーハラスメントがこれだけ世間では騒がれていますから、重々承知だと存じます。

正しい叱り方(注意の仕方)

スタッフに成長してもらいたい。
スタッフをきちんと育成したい。

先生の歯科医院でスタッフを育て貢献できるスタッフにしたいはずです。スタッフにダメージを与えない的確な指導や注意の仕方、叱り方は、これまでお話ししたようにスタッフの置かれた環境レベル、行動レベルで言葉かけをしていきます。人間性や価値観、能力を否定されて誰もいい気持ちはしませんし、ただ傷つくだけです。「環境」や「行動」の部分を注意されるとより具体的な情報ですので、改善方法が分かりやすくなり、注意を受けたスタッフも成長しやすくなります。ただ、あまり細かく改善方法を先生から提案しすぎてもスタッフが自ら考えることを奪ってしまいますので、先生の指示でしか動かないスタッフになってしまう危険性もあります。「環境」や「行動」に意識を向けつつスタッフにどうすれば改善できるかを考えさせることが一番効果的だと考えます。そして、言語と非言語が一致することも重要です。穏やかな口調で「時間を守れないなんて、ダメ人間だね」と言われても感情的な強い口調で「5分前行動を意識するように!」と言われてもどちらも逆効果なんですよね。

効果的に褒めよう!

先ほどの例
「無遅刻無欠勤だね!」
「毎日5分前行動は偉いね!」
「皆勤賞はすごいね!」
「うちの医院のため、患者さんのために努力しているね」
「責任感があって素晴らしいです!」

環境➡️行動➡️能力➡️価値観➡️自己認識、この順で褒めています。

同じ褒め方でも、環境や行動、すでにあるものを褒められるよりも、スタッフの存在価値や能力を褒めてあげるとスタッフは自分自身が気づいていない内面まで評価してもらえるので、嬉しい気持ちになりますし、より医院のために貢献しよう!という気持ちが強くなります。

スタッフを成長させたい

スタッフを成長させるということは、歯科医院全体を底上げできるということ。先生もたくさんの業務を抱え、スタッフの教育に対してお悩みが絶えないはず。スタッフが入れ替わったり点数改正によるシステムの変更によりスタッフにも歯科医院の変化についてきてもらう必要があります。常に変化し続けることに対して気持ち良く仕事してもらえるスタッフと共に医院を成長させていきたいものですね。

自分の歯科医院をズバッと客観視し、何が良いか何が良くないか明確にしスタッフが成長できるためのヒントをいろんな角度からお伝えいたします!